きっかけは"食べる"ということから④

数回に分けて書き連ねましたが、まとめの回として、家族が施設に入居されている方や、これから入居施設を探そうと考えている方へもご参考になればと思います。
8.チームの中心はだれ?

8.チームの中心はだれ?

要介護者を支えているご家族の皆さん、
疑問に思ったり、して欲しいことがあったら、施設のスタッフに遠慮せずきちんと伝えてください。
高齢者が心もカラダも健やかに穏やかに過ごすために介護サービスはあり、サービスを提供するうえで、介護に関わるスタッフとご本人やご家族は"チーム"なのです。
伝えた希望が必ずしも叶わないこともあるかもしれません。施設の内部の状況が原因でできないこともあるはずです。でも、どうしたら希望した形に近づけることができるかを、納得した落としどころが見つかるまでトコトン話し合った方が良いと思います。
残念ながら、現実の介護施設は深刻な人手不足という問題を抱えています。物理的な人手も不足していますが、それ以上に技量の不足がさらに深刻です。育成もままならないまま、介護の初心者レベルの職員が介護度5の重度の方のサービスに入らざるを得ない状況も現実にはあります。

それはどの職種にも言えます。
例えば調理スタッフも、ホテルのレストランから介護施設の厨房に転職して来た場合、同じ調理の仕事でも視点がまったく違います。
介護施設のお料理はとても難しいのです。
特に有料老人ホームでは、お元気なうちからご入居される方から介護度が高い方まで、身体的な状態の個人差がとても大きいため、食事へ求められるニーズも複雑多岐にわたります。
お元気な方は、季節感のある食材を使った美味しい料理が食べたいと言われ、一方では、病気のため食事制限があったり、食べる機能の変化に対応した食事形態に加工しなければならなかったり、初めて介護施設の調理にかかわった方は困惑します。
それを理解して日々の調理ができるようになるまでには、時間がかかります。
でも、目的はひとつ。どのような方にもおいしく召し上がっていただきたい。その思いを込めて日々の調理に向き合っています。

話は少し逸れましたが…
このような現実の中、
自分の大切な人を守れるのは自分だけです。
チームの中心にいるのはご本人とご家族なのですから、受け身ではなく、積極的に伝えていただきたいと思います。
たくさんの要望を伝えられるご家族の一方で、言えないご家族もいます。
なぜ言えないのか??
『お世話になっているから悪くて言えない。』
『親が世話になっているし、人質に取られているから言えない。』
と言う声も耳にします。
お金を払って施設に入居していただいた方に、このような思いはさせたくないです。
それぞれの立場でいろいろな考えや意見があると思います。
でも、私のように理想論を諦めずに語る人も居てもいいんじゃない?と思うのです。
私の中でもまだまだ答えは出ませんし、
人それぞれ求めるものが違うのですから正解なんてないのですよね…
これからも自分自身はもちろん、皆さんに投げかけ続けて行きたいと思います。

さてさて、Aさんへの食事はこの後たくさんの試行錯誤を繰り返して行きます。
それはまた別の機会に書いていきたいと思います。

※Aさんについては、以前の記事
きっかけは"食べる"ということから②〜③を合わせてお読みいただければと思います。
(記載した内容はあくまでも個人の見解です)

食べる口を作る swallow

管理栄養士の木富れい子です。 いつまでもおいしく『口から食べたい』 という思いに寄り添い、 『食べる口を作る』取り組みをしています。 加齢により、食べる機能が低下して、 おいしく楽しいはずの食事が、 “誤嚥性肺炎” “窒息”など、 命を奪う悲しいものになることもあります。 摂食・嚥下にかかわる管理栄養士として今までの経験で得たこと、日々の気付きなどを 発信して行きたいと思います。

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